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デーモン
狂気に沈んだ画家ヴルーベリ、決闘の銃弾に斃れた詩人レールモントフ
ロシアの二人の天才が創造したデーモンの相貌
19世紀ロシアを代表する詩人レールモントフ。決闘により26歳の若さで亡くなった彼が12年間にわたって改稿を重ねた物語詩が「デーモン」である。流麗で疾走感あふれる詩行には、痛切な響きが宿っている。
「悪しき魂」の真摯な愛は成就することのない不可能な願いなのだ。
その詩に魅せられた同時代の画家ヴルーベリもまた、生涯をかけてデーモンの主題に挑んだ。モスクワのトレチャコフ美術館の「ヴルーベリの部屋」に架けられた大作「座るデーモン」の憂愁に満ちた姿は見るものを捉えて離さない。同じ部屋に飾られた「倒されたデーモン」に、ヴルーベリは展覧会場でも筆を足し続けたという逸話が残っている。
想いを遂げられなかった愛の苦しみを知る詩人と画家。その日々の刻印が、それぞれの「デーモン」となった。
訳者の前田和泉は現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。著書に『マリーナ・ツヴェターエワ』(未知谷)、訳書に『通訳ダニエル・シュタイン』(新潮社)、『アルセーニイ・タルコフスキー詩集 白い、白い日』、アンドレイ・タルコフスキー『ホフマニアーナ』(共にエクリ刊)などがある。
デーモン
詩:ミハイル・レールモントフ
絵:ミハイル・ヴルーベリ
訳:前田和泉
サイズ:A5判変形
88ページ カラー挿画:8ページ
定価:2,700円+税
2020年12月10日 発行