木林文庫コラム

  • リンゴ、りんご、林檎

    エクリ所蔵の「樹」の本でいちばん数が多いのは、書名に「りんご」と入った本だ。とりわけ絵本が多い。『王さまのリンゴの木』『おばけリンゴ』『エレンのリンゴの木』『えんやら  りんごの木』『ひめりんごの木の下で』『りんごのえほん』『リンゴの木』『りんごの木』『りんごのきにこぶたがなったら』『りんごの木を植えた男  ジョニー・アップルシード』の10冊が絵本。
    絵本以外のリンゴ本に、『リンゴはなぜ木の上になるか』『林檎の木の下で』『林檎の樹の下で』『林檎の礼拝堂』『奇跡のリンゴ』『ももの木  なしの木  りんごの木』がある。
    カナダの作家アリス・マンローの『林檎の木の下で』が一押しの林檎だけれど、回を改めて別の括りで触れてみたい。
    最古参は30年近く前、長男と読むために買ったポーランド生まれの作家ヤーノシュの『おばけりんご』。長く読み継がれているロングセラー絵本の一冊で、今読み直しても楽しい。
    「ひとつで  いいから、うちのきにも  リンゴが  なりますように。そんなに  りっぱな みでなくても  いいのです。ひとつで  いいから  ほしいのです」から「ふたつで  いいから、リンゴが  なりますように。ちいさな  リンゴで  いいのです。かごに  はいるくらいのが  ほしいのです」まで。矢川澄子の訳は読み聞かせに申し分のないリズムがあって、主人公ワルターさんの、いつも途方にくれているような表情にぴったりだ。まさに、「声に出して読む日本語」。谷川俊太郎がこの絵本を脚色した同名の舞台台本を書いている。
    ところで、絵本の名作、佐野洋子の『100万回生きたねこ』は読み聞かせには向かない。「夜に  なって、朝に  なって、また、夜に  なって、朝に  なって」までくると、声が裏返ってしまう。子どもに読んでいたとき、「あっ、声が変わった」と云われてしまったことがある。

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